不動産を売却した場合、基本的には譲渡所得税が課税されますが、個人がマイホームを売却した場合には、課税を緩和する様々な特例が用意されています。
マイホームを売却しても、新たに住むところは必要なので、「居住用財産の譲渡による所得には担税力がない」という解釈に基づく措置ということになるようです。
特例としては、(1)3,000万円特別控除、(2)居住用財産の買換え、(3)軽減税率があり、これらの特例は、原則として居住用財産の譲渡につき1つしか適用できません。※例外として(1)と(3)の重複は認められるようです。
今回は、「3,000万円特別控除」について具体的に見ていきましょう。
3000万円特別控除とは
「3000万円特別控除」とは、マイホーム(居住用財産)を売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除することができる特例のことをいいます。
国税庁のHPには、「No.3302 マイホームを売ったときの特例」として、「マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。」と解説されています。
実際に特例を受けるためには、次に説明する「適用要件」「適用除外」の規定がありますので注意が必要です。
マイホーム(居住用財産)の認定条件
居住用財産とは、「所有者が自己の生活の拠点として利用している家屋」をいい、一時的に利用している家屋は認められません。
国税庁のHPには、下記のような家屋には適用されませんと記載されています。
- この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
- 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋
一時的な利用かどうかの判定は、住民票の有無ではなく、日常生活の状況、入居目的、構造等などが総合的に判断されますので、十分にご注意ください。
3,000万円特別控除の適用期限
現在住んでいるマイホームを売却する場合には問題になりませんが、以前に住んでいたマイホームを売却する場合には、3,000万円特別控除の適用期限に注意が必要です。
国税庁のHPによると、「以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」と規定されています。
住まなくなってから長期間経過(3年後の年末を経過)していると、3000万円特別控除を受けられなくなりますので、不動産売却は計画的に行うことが必要です。
さらに注意が必要なのは、建物を解体した場合です。
もし、住まなくなってからすぐに解体した場合は、解体から1年以内が期限となります。住まなくなってから3年に近い期間が経過してから解体した場合は、「住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日」と「取り壊しから1年」のいずれか早く来た方が期限となります。
また建物を解体した場合は、「家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと」が条件となりますので、一度でも敷地を駐車場などその他の用途に使った期間があれば、3000万円特別控除は適用されません。
3,000万円特別控除が適用されるためのその他要件
その他、3000万円特別控除の適用を受けるためには、下記の要件についても注意が必要です。
- 売った年の前年及び前々年に、3000万円特別控除の適用を受けていないこと
- 売った年の前年及び前々年に、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと
- 売った年、その前年及び前々年に、マイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
- 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
- 売主と買主が親子や夫婦等、特別な関係でないこと
※特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
また、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)については、入居した年、その前年又は前々年に3000万円特別控除の適用を受けていた場合、適用外となりますのでご注意ください。
買替で新居を住宅ローンで購入する場合、「住宅ローン控除」は非常に大きなメリットになりますが、「3,000万円控除」とは併用できないため、どちらを使った方が得になるかシミュレーションする必要があります。申告後の取り消しはできませんので、必要であれば税理士等にご相談ください。
「3000万円特別控除」については、いくつかの適用要件はあるものの、高い節税効果を持つ特例措置です。できる限り適用要件を満たすよう、早めの準備、早めの相談を心がけて賢く特例を使いこなしましょう。
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