大切な資産である不動産を出来るだけ高く売りたいと考えるのは当然のことですが、実際にどれだけの価値があり、現実的にいくらで売れるかを正確に把握することは簡単ではありません。
今回は、不動産売却の際に関係する「相場価格」「査定価格」「売出価格」「成約価格」といった様々な“不動産価格”について考えてみたいと思います。
不動産売却に関係する様々な“不動産価格”
中古マンションや中古一戸建ては、一般的な消費財と異なり“定価”や“メーカー希望小売価格”などの取引の基準となる価格が存在しません。(一方、「一物四価」「一物五価」とも言われる「土地」には、一定の基準となる価格が複数存在します。)
まずは、不動産売却の際に関係する「相場価格」「査定価格」「売出価格」「成約価格」について、整理しておきましょう。
相場価格
現時点で実際に不動産売買の取引が成立している価格をベースに、景気動向や地価動向を加味した価格水準をいいます。
国土交通省の「土地総合情報システム」、「レインズ・マーケット・インフォメーション」などのサイトでは、物件を特定することはできませんが、成約情報(物件価格、土地面積、建物面積、間取り、築年数、成約時期)を閲覧することができます。
査定価格
不動産会社が、物件調査(現地調査)と不動産相場に関する客観的な資料を基に、不動産取引のプロフェッショナルとして提言する価格をいいます。
調査時点であれば、概ね3ヵ月程度で売却できる水準と言われており、相場価格をベースに取引事例比較法で算出することが多いため、不動産会社によって極端に差が出るものではありません。
しかし、複数会社での競争となる不動産一括査定サイトでは、売却依頼を獲得するために高めの査定価格を出すケースが増えており、業界内で大きな問題になっています。
車の買い取りとは異なり、不動産売却の場合は、査定価格が高かったからといって、高く売れる訳ではありませんので、十分にご注意ください。
売出価格
査定価格をベースにして、売主と不動産会社が協議の上で取り決めた価格をいい、この価格で売却活動をスタートすることになります。
売主の希望や意向が反映されるため、査定価格より高めの設定になることが多いのですが、相場価格との乖離が大きいと成約までに時間がかかるため、慎重な判断が求められます。
成約価格
売主と買主が合意し、売買契約が成立した価格を成約価格といいます。
売却活動の際に、買主側から値段交渉が入ることも多いため、成約価格は売出価格と同等もしくは低くなることが一般的です。
売却活動が長期化すると、売れ残り感も出てくることから成約価格は低下傾向を強めることになります。
売出価格を決めるために知っておきたこと
不動産売却活動をスタートするためには、売出価格を決める必要がありますが、高く設定し過ぎると売れ残り物件になってしまい、結果として大幅に値段を下げることを余儀なくされてしまいます。
一方、安く設定し過ぎると、早期売却には成功するものの、「もっと高く売れたのではないか」という後悔が残ってしまうことでしょう。
ここでは、売出価格を決める際に知っておきたいことを簡単にご説明します。
同じ不動産は存在しない
不動産が、車などの他の商品と最も異なるのは、一つとして同じものが存在しないということです。(不動産の「個別性」といいます)
同じマンションであっても、間取り、面積、方角、所在階、日当たり、眺望などは物件ごとに異なり、その結果は価格にも影響を及ぼします。
売却不動産の強みを上手にアピールすることが出来れば、高めの売出価格であっても妥当だと判断される場合がありますので、所有不動産の個別性に着目し、強みを探してみましょう。
見つけ出したいのは一人の買い手だけ
不動産売却は、大量生産された商品を大量に売るプロセスではありません。たった一人の買い手さえ見つけることが出来れば、売買取引は完結するのです。
例えばマンションの場合、相場よりも高く売り出していたとしても、近隣の住戸の方が購入を決めて、あっさりと売却活動が終了してしまうことも珍しくありません。
近隣の住戸の方にとっては、自宅の近くにある希少物件ということになり、高めの売出価格であっても、購入に値する金額になるのです。
値下げのスケジュールを予定しておく
「同じ不動産は存在しない」「見つけ出したいのは一人の買い手だけ」ということを意識するならば、売却活動をスタートするタイミングでは、少々高めの売出価格でチャレンジすることも十分に意味があると考えます。(もちろん、売り急いでいないことが前提となります)
しかし、問い合わせ等の反響が少なければ、ある程度のタイミングで値下げを視野に入れる必要があります。
あらかじめ値下げのスケジュールを意識した売却活動を行っていれば、価格交渉を求める買い手に対しても余裕をもって接することができるので、チャンスを逃がす可能性が低くなります。
売却活動が長期化することを避ける意味でも、「値下げのスケジュールを予定しておく」ことは大切なことだと考えます。
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