マイホームを保有している方のほとんどが加入する「火災保険」が、2024年後半にまたしても改訂される見通しとなりました。
2022年10月には加入年数の短縮が実施されており、最長10年だった契約可能年数が最大5年に変更されています。
この変更も実質値上げと捉えられていましたが、今後はますます厳しい値上げの波が押し寄せてくる状況です。
マイホームの維持費となる火災保険の現状と今後の見通しについて、見ていきたいと思います。
損害保険業界の厳しい現状
ここ最近頻発しているゲリラ豪雨や大型台風などにより、損害保険業界の経営環境は厳しさを増しています。
支払われた火災保険料トップ10を見ても、実に7件がここ10年に発生した災害によるもので、気候変動により影響が表れているようです。
実際、2018年度には度重なる自然災害が起こり、支払われた国内大手の損害保険料の合計は1兆5千億円以上にものぼりました。これは東日本大震災時をはるかに上回る金額で、過去最大となっています。
こうした予想外の災害多発により、損害保険会社の収支が著しく悪化していることが、火災保険を値上げする大きな要因となっているようです。
火災保険の実質負担増について
2024年後半に火災保険料の値上げ見通し
損害保険会社の火災保険料率に大きな影響を与える数値として、損害保険料率算出機構(以下、損保料率機構)が算出する、火災保険の「参考純率」というものがあります。
使用義務のない参考数値ということですが、損害保険会社は参考純率をそのまま使用したり、修正して使用したりするなど、実際の火災保険料率に与える影響は少なくないようです。
2023年6月には、この「参考純率」に関して、過去最大の13.0%引き上げ(全国平均)が決まっており、2024年秋にも火災保険料が1割超上がる見込みと見られています。
参考純率の引き上げは2021年以来2年ぶりで、その際は、参考純率の平均10.9%引き上げに伴い、損保各社は翌年に11~13%程度の値上げに踏み切っています。
損害保険各社は自動車保険の保険料も値上げする見込みで、家計の負担がますます増えることになりそうです。
水災補償の保険料を水災リスクに応じた5段階に細分化
従来、水災補償の保険料は全国一律でしたが、今後は水災リスクに応じた5段階に細分化されることになりました。ハザードマップを見て分かる通り、地域によって水災のリスクは大きく異なっていることから、公平負担の観点から改訂に踏み切ったようです。
具体的には、市区町村別に、保険料の安い「1等地」から保険料の高い「5等地」に細分化され、保険料負担として約1.2倍の差が生じることになります。
水災リスクの高いエリアにお住まいの方にとっては、こちらも実質値上げということになり、今後の物件価格にも影響を与えることになりそうです。
長期契約割引の改訂
2021年6月には、火災保険の契約年数についても最長10年から最長5年に新たな制限が設けられました。次回の火災保険更新でも契約期間10年を選択し、「長期契約割引」の恩恵を受けようとされていた方は注意が必要です。
火災保険料は、1年払いを繰り返すよりも、一定年数分を一括払いする方が安くなる仕組み(長期契約割引)が採用されています。従来は、10年分一括払いで15.0%以上の長期割引を受けることができましたが、今後は最長5年分の一括払いとなり、割引率も10%程度に引き下げられるようです。
長期契約割引が見直されることで、補償内容が変わらなくても、10年単位で考えたときには大きな負担増となります。
家財保険の「自己負担額」アップ
火災保険とセットで加入出来る家財保険についても、「自己負担額」アップによる実質値上げが発生しています。
災害が起こった場合の実質的な被害を受けるのは、家具や家電といった家財道具であり、日常的に子供が遊んでいて家電を壊したり、窓ガラスを割ってしまったりといったケースや、泥棒被害にあった場合にも対応されることから、家財保険に加入する方は少なくありません。
この家財保険には「自己負担額」が設定できることになっており、自己負担額を超えて初めて超過分の保険金が下りてくることになります。
従来、「自己負担額」については、0〜1万円と非常に格安でしたが、直近では5万円に引き上げられており、こちらも火災保険に関する実質負担増になっています。
ひとつ安心なのは、あくまで「日常的な生活をしている中でのアクシデントの補償に限る」とされていることです。火災や台風などの自然災害における自己負担額は据え置きとされています。
このように、マイホームを所有する際に必須と考えられる「火災保険」に関する負担が年々大きくなっています。まずは、火災保険の残存期間を確認し、今後の住み替え、マイホーム売却に備えていくことをおすすめいたします。
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