マンションに住んでいると、住宅ローンの支払いの他に、管理費・修繕積立金の支払いが必要となります。それ以外にも、駐車場使用料、駐輪場使用料などの負担が毎月発生します。
これら管理費・修繕積立金などを滞納したら、いったいどうなるのでしょうか?また、滞納中にマンションを売却することは可能なのでしょうか?
今回は、最近増えている管理費・修繕積立金の滞納問題について、見ていきたいと思います。
管理費・修繕積立金とは
管理費は、マンションの敷地や共用部分、共用施設や設備などの維持管理に使われる経費で、例を挙げると、エレベーターの点検、エントランスや廊下など共用部分の清掃、共用部分の光熱費、管理員の給与などが該当します。日々のランニングコスト的な費用と言えます。
修繕積立金は、将来必要となる修繕工事に備えて、管理会社が作成した「長期修繕計画」に基づき計画的に積み立てていくもので、将来にわたって、様々な設備の性能維持や修繕工事に使われることになります。具体的には外壁の補修、屋上の防水工事、給排水管工事などが該当します。
マンションは、専有部分については入居者の所有になりますが、敷地や共用部分については、購入者全員の共有ということになっています。共同住宅であるマンションの資産価値を下げないようにするためには、日々の管理や修繕が不可欠であり、そのための費用が管理費・修繕積立金ということになります。
近年増えている管理費・修繕積立金の滞納
資産価値を維持するために必要となる管理費・修繕積立金を長期にわたって滞納する人が出てくると、マンションの維持管理に支障がでてくることになり、将来的には資産価値の下落という大きな問題につながることも懸念されます。
実際に、滞納はレアケースではなく、長期の滞納者を抱えている管理組合は少なくありません。「平成30年度マンション総合調査結果(国土交通省)」によると、管理費等の滞納問題が発生していないマンションは全体の62.7%に留まり、全戸数の10%以上が滞納しているというマンションも全体の0.2%という割合で存在しているようです。
管理費・修繕積立金の滞納者が増えるのは、経済不況や雇用状況の悪化が大きく影響していることは間違いありませんが、ここまで滞納が増えるのは督促が緩いという事情も関係しているように思われます。
住宅ローンの場合は、1度でも滞納すると金融機関から厳しい督促の連絡が入りますが、管理費・修繕積立金を滞納しても管理組合からすぐに連絡が入るということはないため、滞納していることに危機感がなく、支払いを後回しにするケースが多いのでしょう。
コロナ禍が続いている状況を踏まえると、管理費・修繕積立金の滞納問題は今後も増加し、大きな社会問題になることも予想されています。
管理費・修繕積立金を滞納するとどうなるのか?
では、実際にマンションの管理費・修繕積立金を滞納すると、どうなっていくのでしょうか?一般的なケースを想定した場合、次のような流れとなります。
1.管理会社から滞納者への連絡
2.理事会での報告・対応協議
3.管理組合から滞納者への督促
4.滞納が長期化する場合は、内容証明等での支払い請求
5.管理総会での報告
6.代理人弁護士の選任・訴訟の提起
7.債務名義の取得および競売申し立て
滞納発生から法的措置に至るまでに、管理組合内で様々な話し合いが必要となり、問題解決は簡単ではありません。
しかしながら、管理費・修繕積立金の滞納は、マンション運営に支障をきたす深刻な問題となっており、近年では競売を申立てる管理組合も増えてきています。
滞納した場合の最終的な請求額は、滞納額に加えて、高額な遅延損害金や訴訟や競売に要した費用も上乗せされるため、支払い額は膨れ上がります。
仮に管理費・修繕積立金を滞納する事態に追い込まれたら、早めにマンション売却を検討することが必要となります。
管理費・修繕積立金を滞納したままの物件は売買できる?
管理費等を滞納している区分所有者が、滞納を解消することなく、売却をすることはできるのでしょうか。
区分所有法第8条では『前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる』とされており、ここでいう債券には、管理費や修繕積立金も含まれることになりますので、債務承継とセットで売却は可能です。
管理費・修繕積立金を滞納している物件を購入した新たな所有者には、前所有者が滞納した管理費等の滞納を支払う義務が付随することになりますが、通常通りの仲介取引となります。
売却の際は管理費・修繕積立金の滞納事実を、重要事項説明の中に記載する必要があり、事実を隠したまま売却すると、損害賠償などの法的措置がとられることになるので注意が必要です。
滞納があるからといって売れない訳ではありませんが、売却価額を大幅に引き下げなくてはならない可能性があることも、視野に入れておくべきでしょう。
できるならば、滞納に至るまでに売却手続きを進める方が得策ですので、早めに不動産会社に相談することをおすすめいたします。
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